RIP Kato.im

機を逸した感じは若干ありますが書かざるを得ない。

事は7月14日。会社のチームのほうで使っていたチャットツールKatoが8月31日でクローズするというアナウンスがやってきました。

WHY
In short—Slack ate the world and we failed to gain traction. Our SAML- and SCIM-enabled enterprise product had no takers from larger companies. The unique Kato features that made it stand out from the competition—proper multi-team support, swim-lane multi-chat design, great search, Vim-based keyboard shortcuts, the fast-forward button (esp. on mobile), and flexible group mentions—weren't unique enough to get a critical mass of people publicly excited about the product.

メールによると大企業のユーザーがつかなかったことが主な原因のようです。ほぼ全ての機能を無料で提供していたのは他のチャットサービスと比べても圧倒的で、他のサービスだったらお金払わなくては使えないような機能ですら平気で無料で提供していたことから、どうやってマネタイズするんだろう、というのは気になっていました。StackShareにおいても"Suspiciously Good"と表現されるだけあります

何がよかった

他のチャットサービスを試してみてそのいずれにも存在しない機能として、メールの引用にも書かれている"swim-lane multi-chat design"と"fast-forward button"が圧倒的に便利でした。特に"swim-lane multi-chat design"(https://kato.im/product の一番上の画像参照)は他のチャットサービスでもすぐに実装してほしいくらい。基本的に会社で単一の仕事だけやっていればよいということはなく、複数の違った目的のチームで仕事をすることのほうが多いため、複数ルームを同時に見られるということは非常に重要です。特に今はメインで担当しているプロジェクトが2つと頻繁に連絡をとる必要のあるチームが2つ、さらに社内サークル活動的なルームまで含めるとチャットウィンドウを5個横に並べたい状況になることは多く、それをサポートするインターフェースを持っているのは調べた限りではKato.imだけでした。またこれだけ多くの画面見るようになるとノイズコントロール機能と未読処理機能が非常に重要になってきて、「Watch以上のレベルのチャットルームの未読を順番に読んでいけるボタン」(fast-forward buttonとよばれているらしいですが名前を気にすることがなかったくらいよく使った)がとにかく助かりました。モバイルでその強みを発揮できるとのことでしたが、モバイルアプリは細かい不具合が多く、こちらまでリソースが回っていない感はありましたね…。

特に驚いたこととしては、Kato Supportっていう部屋が各Organizationごとに自動で用意されていて、ここに書き込むと中の人が応答してくれます。中の人といってもただのサポートセンターではなく、出てくる人がCEO/Founderとかそういうレベルの人です。開発者もみていて、Redmineプラグインにコミットを入れるにあたってもKato Support部屋でつついたらすぐにPull Requestに応答してくれたりしました。ユーザーのサポート対応はとにかく割り込みや負荷と感じがちなところをこれだけオープンにやっているというのは驚愕です。

代替をいくつか試してみた

closeしてしまうのは仕方がないので代替を探すことにしました。以下概観。

Slack

世界を食った、と表現されるだけあって、今やChatOpsといったらSlack、みたいなところもあるくらい浸透しているチャットサービス。それだけあって、API連携の開発も盛んで外部ツールを連携させようと思ったら大抵口があるかプラグインが見つかる。各プラットフォームのネイティヴアプリもある、マルチチームサポートもある、と割と言うことない程度には機能は充実しているのですが、$6.67/(user*month)の課金オプションを使わないと連携の数に限度があるというのが要件的に厳しく今回はパスとなった。少なくとも1つのチームで6種類の外部連携使ってるんですよね…

idobata

日本のRubyコミュニティでよく使われてるらしいチャットツール。現在のところ無料で提供されていて課金しないことによる機能制限はなく、API連携もデフォルトでかなりのオプションが用意されている。マルチチーム(Organization)対応と設定済みのAPI連携が参加者と並んで表示されるインターフェースが個人的にはよいと思った。あと開発者が提督。おそらくマルチOrganization対応の関係からかPrivate Chatがないところが若干惜しいか。オープンソースとかコミュニティベースのプロジェクトではこっちを使っていこうと思った。

Flowdock

大抵のモダンな機能は持ってるうえでチャットのインターフェースを洗練させることで差別化していると思われるツール。特徴的なインターフェースとして「Threaded Chat」(同じルームでもトピックごとに発言をまとめて表示させることができる。発言するときはどのスレッドかを指定)、「Team Inbox」(API連携からの発言は別のタブに表示され、人間の発言とAPI連携の発言が区別しやすい)があります。この前ブランチを3桁レベルで削除したときはチャットルームがAPI連携の発言で埋まってしまったわけですが、Team Inboxがあれば人間の発言が流れずに済みます。5人より大きなチームは3ヶ月の試用期間後課金オプション($3/(user*month))に移る必要があるということで、判断を急ぎたかったこともあり今回はパス。Slackのように機能制限で永久無料か、機能は全開だけど

Fleep

Kato.imのメンバーが注目しているらしい(Support部屋情報)サービス。元Skypeの人がやっているとのこと。無料でほとんどの機能がフルオープン、有料になるとできるのはファイル容量増加+プレミアムサポートと割と運用で回避できそうなオプション、ということで無料でできることがイケイケなのはKatoとそっくりか。しかしIntegrationがまだ足りない(RedmineやJenkinsがない!)しコミュニティがプラグインを提供している様子もない。ちょっと厳しいですね…。

HipChat

THE老舗。無料枠でIntegration無制限っていうことで避難先はこちらに。とはいえ若干辛みを感じ出してきている。わかりやすいところではMarkdown非対応など。


とにかく素晴らしいサービスが一つなくなってしまうということで非常に残念ですしこれだけイケてると思っていたサービスでもうまくいかないとなるとサービスビジネスの難しさを痛感する限りであります。